余命短い病床の母に、花嫁姿を
「ガンで入院している余命短い母に、最後に私の花嫁姿を見てもらいたいんです。」
そういってお越しいただいたXさま。気丈な姿と、でもガラスの様に繊細な心が伝わってきて、なんとかしようと撮影を即決。ブライダルソラは撮影用の衣装も持っていますし、チームの美容師も快諾。病院もご協力してくださり、お支度用に病室を一部屋用意してくださいました。
そして撮影当日。お嫁さんのお支度が出来上がってもお母様の姿は見えません。昏睡状態から目が覚めないんです。不安そうな表情のお嫁さんを「きっと大丈夫、見に来てくれるから。」と元気づけ、待つこと1時間。奇跡的にお母様の目が覚めたんです。看護師さんがベッドごと病室からお母様を連れてきてくれたときの安堵の気持ち、僕もホッとしました。
嬉しそうなお母さん。思わず拍手が。
「私の花嫁姿、わかる?」母と娘、それ以上の会話は必要ありません。
言葉がいらない母娘の心のつながり。
なんとお医者さん、看護師さん、他のスタッフさんも一緒に「てんとう虫のサンバ」で結婚のお祝いです。
お婿さん、ご両親の前で「お嬢さんを幸せにします!」僕も撮影しながら涙が止まりません。
最後にみんなで集合写真。
面会用のスペースでの結婚式写真。そこは立派な結婚式場じゃないし、美味しいお料理もありません。それでもこのご家族にとって価値のある時間だったんじゃないでしょうか。30分ほどの短い時間でしたが、今回ほど尊い時間の結婚式撮影は初めての経験でした。その時間を共有できたこと、お嫁さんお婿さんと一緒に作りあげることができたこと、そしてその時間を写真に残せたこと。ウェディングフォトグラファーという仕事をしていて本当によかった、そう思える撮影でした。